
随意契約とは
「随意契約」とは、競争入札をせずに国や地方自治体等が任意の事業者を選定し契約する方法です。
入札は原則として「一般競争契約」「指名競争契約」のように複数の事業者が競争入札したのち契約を結びます。しかしこのような競争の方法によらないで、法令に基づく特定の条件下で特別に認められているのが随意契約です。
随意契約のメリット
- 契約が結ばれた場合、落札が確実になる
- 入札手続きの必要がないため、手続き期間を短縮できる
- 価格以外の要素での勝負ができる など
多くのメリットがありますが、受注実績のない企業などは随意契約先の事業者として選定されにくいなどのデメリットもあります。
随意契約の種類
随時契約の種類は主に「少額随意契約」「特命随意契約」「不落随意契約」の3つに分類されます。
少額随意契約
入札手続きを行わない随意契約のうち、契約の種類に応じた一定金額以内のものについて行うことができるものを「少額随意契約」といいます。
少額随意契約では、発注者側が事前に選定した2~3社の見積もり合わせ、または見積もり合わせ(オープンカウンター)をすることによって契約の相手方を決定します。
案件数の多い少額契約での入札の手続きを省略することで、事務手続きの簡素化、それによる行政運営の効率化を目的としています。
ただし、契約の相手方となる事業者が1社しか存在しない場合は上記の少額随意契約は適用されず、予算決算及び会計令第百二条の四第一項第三号に基づく「競争性がない随意契約」となります。
少額随意契約を行うことができる金額の範囲
少額随意契約を行える金額は都道府県と市町村で金額が異なり、以下の通りとなります。
契約の種類 | 都道府県及び指定都市の場合 | 市町村の場合(指定都市を除く) |
工事や製造の請負 | 250万以下 | 130万以下 |
財産の買い入れ | 160万以下 | 80万円以下 |
物件の借り入れ | 予定賃貸料の年額または総額80万円以下 | 40万円以下 |
財産の売払い | 50万以下 | 30万円以下 |
物件の貸し付け | 予定賃貸料の年額または総額30万円以下 | 左に同じ |
前各号に掲げるもの以外のもの | 100万円以下 | 50万円以下 |
特命随意契約
競争入札を行わず、発注者が特定の事業を指名して契約を締結する方式が「特命随意契約」です。「業者指定契約」ともいわれます。
発注者側の都合や、契約の性質や目的が競争入札に適さない場合、緊急の必要があり競争入札ができない場合等に行われます。「随意契約」というと特命随意契約を指すことがほとんどです。
不落随意契約
随意契約のうち「不落随意契約」とは、競争入札を行ったが落札者や入札者がいなかった場合、落札者が契約締結を拒否した場合等に行われる契約です。
入札者や落札者がいなかった場合は入札手続きをリセットし再入札をするのが望ましいですが、そのために生じる事務手続きなどで業務に支障が生じるなどの場合に実施されます。
この場合、あらかじめ定めた最低価格や条件で契約を行います。
一般競争入札と随意契約の判断方法
一般競争入札か随意契約かを判断するためには、以下を順に確認していきます。
- 契約予定金額が少額随意契約の可能範囲内か
- 競争性のない随意契約に該当するか
上記を適用できるのであれば随意契約が可能で、該当しないのであれば一般競争入札となります。
随意契約と見積もり合わせ(オープンカウンター)の関係
前述した通り、少額随意契約では「見積もり合わせ」が必要です。
「見積もり合わせ」とは
「見積もり合わせ」とは複数の見積書を比較検討することをいいます。
少額随意契約の見積もり合わせでは、事前に厳選した2~3社の見積もり書を比較し契約先の事業者を選定するので、競争入札に比べて競争率が低くなります。入札の手続きがないことで契約締結までの期間も2週間程度に抑えることができますが、契約の公平性や透明性に欠ける事が難点です。
見積もり合わせ(オープンカウンター)とは
「見積もり合わせ(オープンカウンター)」または「オープンカウンター方式」とは、見積もり合わせが発展した形の契約方法です。事前に公開した案件に提出された見積もり書から、契約の相手方を決定する方式をいいます。
見積もり合わせ(オープンカウンター)は見積もりの相手方を特定せずに案件を公開し、見積書を募ることで、公平性や透明性のあるものになるよう配慮しています。よって、入札を行わない随意契約のなかでも競争入札に極めて近い方法ともいえます。
案件公示日から応札日までの期間が比較的短く、契約締結までの期間を短くすることができるため、多くの案件をこなすことができる、中小企業でも参入しやすいというメリットがあります。
対象となるのは主に少額の案件で、金額の基準は前述した少額随意契約と同様になります。
契約締結までの流れ
随意契約を締結するまでの流れの一例をご紹介します。
- 発注者より見積もり書の提出を依頼される
≪見積もり合わせ(オープンカウンター)の場合≫ - 見積書の作成・提出
- 見積もり合わせ
- 落札、契約の締結
1.発注者より見積もり書の提出を依頼される
メールやFAXなどで見積書の提出の依頼が届きます。この時、仕様書の提示があるのであわせて確認します。
見積もり合わせ(オープンカウンター)の場合
公開されている案件を確認し、契約を希望する案件がある場合に見積書を提出します。見積もり合わせ(オープンカウンター)の場合、見積書の提出期限が短いので締め切り日には注意が必要です。
2.見積書の作成・提出
依頼された時に送付された仕様書などをもとに、見積書を作成します。見積書には仕様書に示したとおりの品名、規格、数量、金額など、書類への記入ミスや記載漏れなどの不備がないか、しっかり確認します。提出までの期限は1~2週間程度なので、遅れないように提出を行いましょう。
3.見積もり合わせ
提出された見積書の中から、発注者が正式に契約を締結する事業者を選びます。
4.契約者の決定、契約の締結
正式に契約を締結することが決まったらおよそ7日以内に契約を結びます。
契約書の取り交わしは国の場合150万円以上、地方自治体はそれぞれ規定した金額以上から必要になるので、契約書を省略する場合は請書(うけしょ)を作成するのがよいでしょう。
請書とは、契約条件を明確化し、注文を受けたことを証明する文書として受注者が作成、発行する重要な文書です。
随意契約の取得方法
随意契約は、発注者から指名された2~3社が提出した見積書から契約先が選ばれます。ですがその一方で、随意契約先の事業者として指名されることは簡単ではありません。
では、随意契約を取得するために、どのようなことを行えばよいでしょうか。
訪問営業をして、人脈を作り案件があったときに声をかけてもらえるようにする
案件があった際に思い出してもらい、随意契約の指名を獲得するために行うことのひとつに、営業活動があります。
随意契約に、受注実績が少ない企業が指名されることは簡単ではありません。実績のない事業者より、実績があり信頼のおける企業の方が安心して発注ができるためです。
官公庁への営業活動は、業者の選定を担当する課や係を訪問し、自社の活動や実績のアピールを行います。契約先を指名するのは機械ではなく自分と同じ人であるため、必要な時に思い出してもらえるような人間関係を構築していくことが大切だといえます。
次年度に向けて事業提案を行う
次年度に向けて事業提案を行うことも、随意契約獲得のためのひとつの方法です。
次年度に提案した事業が採用されれば、その事業に詳しい自身の事業が随意契約を獲得できる可能性が高くなります。
具体的な提案を盛り込んだ提案を行うためには、
- 提案先の事業の予算組のスケジュールの確認、
- 事前に公開されている予算書や行政計画の方向性
などの情報収集が重要となってきます。
しっかりと情報収集を行い、自社の製品やサービスがどう貢献するかを提案をすることで、随意契約へと近づくことができるのです。
また、次年度の予算案に間に合うよう、前年度の前半までにしっかり売り込むことが必要です。
意見招請、資料招請から仕様書作成に絡む
意見招請(RFC)や資料招請(RFI)から仕様書の作成に絡んでいくことは、随意契約を獲得するための大きな一歩といえます。
意見招請とは、入札公告に先立って、調達の仕様書案について企業から仕様書案への意見を求めることをいいます。
資料招請とは、技術や当該分野の事情などに通じていない場合や、初めて扱うシステム、取引したことのない事業者に発注する場合など、各企業の製品やサービス情報といった幅広い情報収集を目的としたものです。
この意見招請や資料招請を行うことで信頼関係を作ることができれば、仕様書の作成にかかわることができたり、仕様書作成案の作成を任される可能性が高くなります。
そうなることができれば、仕様書の中に他社が参加しにくくするための壁を仕掛けることなどができ、より随意契約へ近付くことができます。
まとめ
今回は随意契約と随意契約の獲得方法についてご紹介しました。
随意契約は入札を行わずに契約を締結することで、
- 競争率を低くする
- 事務手続きの簡素化
- 契約締結までの期間の短縮化 など
様々なメリットがあることがわかりました。
一方で、随意契約先事業に選定されることは難しく、そのための努力が必要ということもわかりました。人間関係の構築や、事前の情報収集をしっかりと行い、随意契約の獲得を目指していきましょう。