「公募型指名競争入札」「希望制指名競争入札」とは?

入札中級編

多種多様な入札方式がありますが「公募型指名競争入札」「希望制指名競争入札」は透明性があり、公平で信頼性が高いと評価されている入札方式です。今回はそんな「公募型指名競争入札」についてご紹介いたします。

「公募型指名競争入札」とは?

「公募型指名競争入札」とは指名競争入札のひとつになります。名前からもわかる通り、公募と指名競争の要素を組み合わせた方式です。また「希望制指名競争入札」と呼ぶ自治体もあります。もちろん、呼び名が変わっただけで内容は同じものです。

「公募型指名競争入札」が注目される理由

一般的に、地方公共団体などにおける公共工事を行う際は「指名競争入札」で入札を行っています。しかしこの指名競争入札は、ある一定の資格をクリアした企業のみ指名を受ける権利が与えられるため、入札参加者が限定的に絞り込まれてしまうのです。

もともと指名競争入札は、地域の貢献度や実績を挙げている企業に焦点を当てることで、企業が持つ信用や能力に確実性を持たせ、トラブルに発展させないよう事前に絞り込みを行うという目的がありました。

一方で、入札参加資格のための基準が曖昧であったり、価格競争が起こりにくいなどを良いことに、官製談合といった不公平な仕組みで入札されてしまうケースも問題になっています。過去には、指名されなかった企業が不満に感じ、提訴をした事例もあるほどです。

その打開策として、公募型指名競争入札が注目されています。公募型指名競争入札では、技術等の必要条件を明示して多くの参加者を募り、自ら応募してきた企業の中から入札参加者を選ぶことが可能です。

この仕組みは「透明性」「公平性」「信頼性」が高いと評価されており、近年さまざまな発注者の間で公募型指名競争入札の活用が増えてきました。平等に権利を与え、その中から審査通過者のみを指名して競争入札を行うこの方法は、発注者や入札参加者からも画期的だと評判です。

規模が小さい場合は「簡易公募型競争入札」

また、調査や設計業務などの中でも、特に規模が小さいものは「簡易公募型競争入札」を導入する場合もあります。簡易公募型競争入札は、公募型指名競争入札よりも手続きをより簡易にした入札方式になっており、入札時の時間短縮が狙いです。

「公募型指名競争入札」と「一般競争入札」の違い

公募型指名競争入札と「一般競争入札」の入札方式はよく似ており、間違えられやすいポイントになります。理由としては、あらかじめ条件を提示して参加者を募集するというところが同じだからです。

一般競争入札は原則的に「応募=入札参加」という意味を持ちます。しかし、公募型指名競争入札は一般競争入札との決定的な違いとして、先ほども解説した通り、自ら応募してきた企業の中から入札参加者を選ぶ仕組みになっているのです。

つまり、数多くの応募者の中から入札参加者の指名が行われた後、はじめて入札となります。そのため、応募できたからといっても、必ずしも入札に参加できるとは限らないのです。

応募さえしてしまえば、入札に参加できるのが一般競争入札であり、応募した後に指名をされなければ入札に参加できないのが公募型指名競争入札であると覚えておきましょう。

「公募型指名競争入札」と「公募型プロポーザル方式」の違い

他にも、公募型指名競争入札と名前が似ている「公募型プロポーザル方式」というものもあります。こちらは、名前の「公募型」という部分は同じですが、公募型指名競争入札が「競争入札」の一種なのに対し、公募型プロポーザル方式は「随意契約」の一種です。

しかし、一般的な随意契約では発注者が「任意」に選んだ相手と契約を結ぶのに対し、プロポーザル方式は任意ではなく「提案」に基づいて契約相手を選抜するといった違いがあります。

「プロポーザル方式」とは?

プロポーザル方式は、高度な技術が要求される専門業務の発注に使われる発注方式です。発注者の必要とする内容に対し、業務を受注したい企業が一定のテーマに基づいて金額や方針を企画し、技術を提案するといった流れになります。あらかじめ、その技術を持った企業を発注者側から任意で指定し、企画提案を経て契約相手を決定するのです。

「公募型プロポーザル方式」の流れと「公募型指名競争入札」の違いは判断方法

同じプロポーザル方式でも、公募型プロポーザル方式は、一般競争入札と似た仕組みになっており間違いやすいです。以下、公募型プロポーザル方式の一般的な流れになります。

  1. 掲示やWEBサイトなどで要件(名称・業務内容・履行期間・金額の上限・参加資格・評価基準・スケジュールなど)を公示
  2. 要件を満たした参加の意思を持つ企業の中から発注者側が「技術提案書提出者」を選定
  3. 技術提案書を提出した企業と話し合いを行い、その中から優先交渉権者を決定
  4. 優先交渉権者と交渉を行い、晴れて契約を締結

公募から指名までの部分は公募型指名競争入札と似ていますが、決定的に違うのは技術提案書の提出以降になります。

通常、一般競争入札は入札価格を評価する「価格競争方式」か、金額以外も総合的に評価をする「総合評価落札方式」によって落札者を決定することが多いです。一方で、公募型プロポーザル方式では提案金額と提案内容の総合判断で「優先交渉権者」が決定します。

つまり公募型プロポーザル方式は、契約前に金額や契約内容を交渉できるメリットがあるのです。また、交渉が不成立となれば次の相手に交渉権が移ることから、公募型プロポーザル方式は一般競争入札とは似ているようで大きく異なります。

このように、公募型指名競争入札と公募型プロポーザル方式は全くの別物です。

「公募型指名競争入札」の流れ

公募型指名競争入札の主な流れとしては下記になります。

  1. 発注者が要件を公示
  2. 入札参加希望者が「参加表明書」を提出
    (総合評価落札方式の場合は「技術提案書」も提出)
  3. 発注者が「参加表明書受付票」を送付し、続いて「指名通知書」の送付を行う
    (電子入札の場合は「非指名通知書」も発行される)
  4. 指名を受けた入札参加希望者のみ「入札書」の提出
  5. 以降は通常の入札と同じ

これらの流れは、あくまでも大まかな流れとして捉えておきましょう。それぞれ、発注者側の都合や情報内容によっても流れは都度変わっていきます。

入札に参加したいと思った案件は、参加前に一度きちんとこれからの流れを把握し、確認することが重要です。

「公募型指名競争入札」で1社のみ入札だった場合どうなる?

競争入札の根底は名前の通り「競争」です。そのため、公募型指名競争入札においても「競争」をしながら選抜されていきます。しかし、もし入札が1社のみだった場合はどうなるのでしょうか?

この場合、会計法などの法令において「1社入札」の規定がはっきりと定められておらず、考え方について意見が分かれています。

「一般競争入札」の場合

一般競争入札の場合は「1社入札」について有効か無効かの判断が難しく、意見が割れることが多いです。

「競争において選抜することで、経済的な契約締結を目指すといった目的が達成されないのであれば無効にするべき」といった無効派。一方で、「誰でも入札に参加できる機会が平等にあるのであれば、例え1社でも有効にすべき」といった有効派に対立しています。

「公募型指名競争入札」を含む「指名競争入札」の場合

公募型指名競争入札を含む指名競争入札の場合は、一般的に「1社入札は無効」と判断する可能性が高いです。理由として、大前提に入札公告が公開されていないことが挙げられます。

実際の入札案件でも、入札が1社のみの場合には十分な競争性が保てないため入札不成立にしたり、「応募の段階で3社以上の参加表明がみられた場合のみ行う」といった入札実施の必要条件をあらかじめ定めるケースが多いです。

そのため、公募型指名競争入札に参加する場合は、無効となるリスクがあります。事前に必要条件を確認しておきましょう。

まとめ

今回は「公募型指名競争入札」「希望制指名競争入札」についてご紹介いたしました。似たような名前の入札方式が多くあるので、それぞれの違いをしっかりと理解した上で入札を行いましょう。また「1社入札」の場合は無効となるリスクもあります。事前に必要条件を確認し、万全な体制で準備をしておくことが重要です。